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2021.02.11

【桜の香水ができるまで】#06「とある香料との出会い」

何度も試作を繰り返し、私の中で守るべき香りの骨格がより鮮明に見えてきた瞬間がありました。それは、やはり当初から頭の中で描いていた、ジャスミンアブソリュートとイリスアブソリュートの(私なりの)黄金比に近いものです。しかし、どうしてもイリスアブソリュートが鼻に鋭く香ってしまうという課題が残っていました。そこで、骨格はこのバランスをキープしたまま、鋭さをマスキングするための香料を探しはじめました。

探しはじめた、と書きましたが、実は私の中でもうすでに答えは出ていました。バニラアブソリュートの香りです。”バニラ”と書くと、多くの方はアイスクリームのバニラを思い浮かべるかと思います。一般的にスイーツに使われる”バニラエッセンス”の香りは、バニリンという香気成分が特徴となっています。私たちが使用したバニラアブソリュートにもバニリンは含まれているのですが、スイーツのような甘さだけの香りとは一線を画す香りです。

◆バニラアブソリュート:
バニラの鞘の部分から溶剤抽出法によって香気成分を抽出します。豊潤なバニリンの甘さの奥に、スパイスのようなドライな香りやリキュールのようなほろ苦さを感じさせます。バニラは広く親しまれている香料ですが、実は貴重な香料で、ハイクラスなものは1kgあたり300万円ほどで取引されています。

28本目の試作(SS-28)にバニラアブソリュートを入れたところ、期待した以上の素晴らしいアコードが完成しました。トップノートから香り全体を丸く包み込むような柔らかさが生まれ、香料同士の尖りがとても穏やかになりました。私がなぜバニラアブソリュートを使うことに思い至ったかというと、ゲランのルールドニュイという香りからヒントを得たからでした。Libertaのアートディレクションを担当している、Shota Yabeが購入したルールドゥニュイを嗅ぎ、見事なまでのバニラの香りたちに感銘を受けていたのです。その記憶を頼りにバニラアブソリュートをうまく調合していくことで、香り全体の調和を取っていったのでした。ありがとう、ティエリー・ワッサー氏。

次回、サクラジャーナル #07「香りが完成」は、2021年2月13日公開です。

プロフィール:
山根大輝@NY406
Founder&CEO。大学卒業後、コンサルティングファームで働きながらパルファンサトリで調香を学ぶ。好きな香料はプチグレン、ネロリ、ガルバナム。LIBERTAはグリーンタイプを愛用。

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