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\【東京】サロンドパルファン 2024【10/16〜21】/
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2021.09.15

【後編】フラクタス発売記念特別インタビュー

 ——フラクタスの感想で盛り上がっていますが、食のプロとして、香りの重要性についてどのように捉えていますか。
 

香保里さん:店の前でもみじの天ぷらを揚げていると、前を通った方が「いい匂いがする」と足を止めてくれます。美味しさとは味だけではなくて五感で感じるものです。口に入れる前にまずは香りが先にきますから、嗅覚はその中でも特に大事ですし、今は新型コロナウィルスのこともあって、人々もより嗅覚や味覚の大切さを実感するようになったのではないでしょうか。

 

——お二人にとって身近に感じるのはどのような香りでしょうか。
 

香保里さん:仕事でずっと触れていると、収穫の時などもみじの香りを感じるようになりました。少しプーアル茶に似たような香りがするので、もみじで淹れたお茶を使ってもみじソフトクリームも販売しています。

 

節子さん:私はずっと作っていますので、やはり油の匂いでしょうか。でも、一日中油のそばで揚げている従業員さんが、家に帰るとお子さんから「お母さん甘い匂いする」と言われるみたいです。確かにうちは油も特に良質なものを使っていて、酸化しないように定休日以外は毎日揚げています。酸化させないことで、嫌なにおいがしないサラッとした油になるので、そう言われるのではないかと思います。

そういった油の状態も匂いで微妙な変化を感じることもあるので、やはり嗅覚にもよく気を付けていないとだめですね。

 

山根:昔、とんかつ屋でアルバイトしていたんですが、たしかに肉を揚げる匂いとは全然違うなと思いました。

 

節子さん:そうだと思います。あとは、小麦粉なんかも毎回同じものを使っていても季節や温度、湿度によって味や質が変わってしまいます。油もそうですが、管理をきちんと一定に保たないといけないので細かくて本当に厄介ですけれど、そういうところで妥協しないことが美味しさに直結すると考えています。

 

山根:香水も似ているかもしれません。夏に作った香りを、気温の低い日につけるとまた印象が違ったり、季節によって感じ方や香り立ちが変わったりします。けれど、いまこうして四季のコレクションを出している以上は、それぞれの季節に一番合った香りにしたいと思って、微妙に配合を変えたり本当に細かな調整を何度も繰り返しました。

 

節子さん:そう聞くとますます繋がりがありますね。

 

香保里さん:私たちは店頭に立ったり調理をしたりするときに香水をつけることはありませんが、プライベートやちょっと商工会の会議に行くときなどは使っていました。それもここ最近は出かける機会もなくなってしまった。だからこのコラボ企画で久しぶりに香水に触れられて、お店のこと抜きにしてもとても嬉しいです。

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【店頭で揚げる節子さん。油そのものの香りで微妙な質の変化にも気付くという。香水なんておしゃれなもの、と謙遜するが、生活に溶け込んだ「香り」もまた嗅覚のよろこびだ。】

 

——新型コロナウィルスの流行は全国の観光地にも大きな打撃を与えたと思いますが、どのような影響がありましたか。
 

節子さん:観光客は確かに減りました。ただ、うちは地元の方が手土産や贈答品として使ってくださることが多いですし、インターネットで販売もしていますので、遠方の方やちょっと出歩きづらいという方にもご利用頂けています。

観光地にある店ですけれども、観光だけに頼るのではなく、贈り物に使ってもらいやすいようにパッケージを工夫したり、セット売りを幅広く展開したりなどしながら、お陰様で今のところ続けられています。

たとえば、なるべく接触を避けるために新しく個包装のものを作りました。手間は何倍にもなりましたが、お客様が見たときに「あ、個包装があるならこっちがいいわ」と言って頂くことが多くて、やってよかったなと思います。

 

香保里さん:お客様のニーズをとらえながら、とにかくできることをコツコツ積み重ねていくことと、何より楽しんでやりたいことを、前を向いてやる、ということが大事だと思っています。そういう意味では、コロナだからと悲観的なことばかりでもないかもしれません。

そもそも箕面は自然の観光地なので、密にもなりにくいですし、気分転換に訪れる方や近所の子どもたちが寄ってくれたりするので、やはり地元に愛されるというのはありがたいことですね。

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【店頭に並ぶもみじの天ぷら。七味やグリーンティなど多彩な味や個別包装などの工夫で観光地のお土産にとどまらないニーズに応える。】

 

——最近は‶お取り寄せグルメ〟など通販やオンライン販売が主流になっていますが、久國紅仙堂もオンライン販売にも力を入れているのでしょうか。
 

香保里さん:遠方の方や今のようなご時世にはよかったと思っていますが、やはり販売できる数にも限りがあるので、シーズンの秋にはオンライン販売を休止せざるをえなくなります。サイト閉まってたわ、といって買いに来てくださる方もいらっしゃり、ありがたいと思うとともに申し訳なくも思います。

オンラインは販売する場を広げるという目的もありますが、もみじの天ぷらとはどんなものなのか、どう作っているのかということがより伝わればいいなと思って、色々と書いたり工夫したりしています。

 

 

節子さん:私たちは何よりもまず箕面の地の伝統銘菓ですから、地元のお客様が第一ですし、お店を通じて箕面について知ってもらいたいという思いがあります。その点は80年この地で変わらずやってきましたし、これからも続けていかなければいけないと思っています。

 

——逆にリベルタパフュームは店舗を持たずに展開していますが、オンラインに絞ったのはどのような意図があったのでしょうか。

 

山根:リベルタがあえてオンラインから始めたのは、むしろオンライン上だからこそ一人ひとりと向き合えるのではないかと考えたからです。そのお客様が何を見て何を買って下さったか、全てデータとして見ることができるので、それをベースにお客様の微妙な変化やニーズに気付くことができます。でも、イベントで店頭に立ったり、ポップアップなどでお店に置いて頂いたり、こうして長年店舗を守ってきたお話を伺っていて、やはりいつか我々も店舗を持ちたいと思いました。

 

香保里さん:ネットは簡単で店舗は丁寧、と思われがちですけど売る側からするとどちらもお客様への姿勢や気持ちは一緒ですよね。顔が見えない分、ネットの方が難しいかもしれない。でも、ネットで買って下さった方が丁寧に御礼のメッセージを下さることもあって、そういうのを見ると私たちも嬉しくなります。

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【久國紅仙堂のオンラインショップ(http://www.hisakuni.net/)。コロナ禍にもいち早く対応する柔軟性や販売の工夫がよくわかる。】

 

——地域に根差し、家族で伝統を守ることの苦労は想像以上のものがあると思います。地域での取り組みやお二人が意識していることについて教えてください。
 

節子さん:先代の時代は、どのお店も箕面を盛り上げるために、一致団結して色々取り組んでいましたが、今は少しずつそういったことが薄れているような気がします。高齢化や後継者不足というのもありますが、狭い地域のことだからこそ、昔のような一体感を感じにくくなったのは少し寂しい気もします。でも、こうして若い人たちが色々考えてくれたり、なにより、彼女のように外から嫁いできてもこうして一緒にやってくれているのが本当に嬉しいですね。他のお店から羨ましがられることもあります。

 

香保里さん:私も結婚するとき、手伝わないといけないとかいうことは全然考えていませんでした。でもやがて母の背中を見てやっていくうちに、だんだんとこれはすごいことをやっているなと。伝統銘菓を途絶えさせてはいけないんだという強い想いに触れて、自然と自分の役割のようなものを考えるようになりました。かつては駅から滝までの道沿いに40軒以上あった店も、一つまた一つと閉めてしまっている中で危機感は常に持っていますが、楽しみながら新しいことにチャレンジしつつ、とにかくより良いもの、美味しいものを作り、次の世代への橋渡しができればと思っています。

 

節子さん:それでも一番の苦労は、実はここ数年の気候の変化や自然災害なんです。箕面はそこまで影響を受けない地域だったのが、だんだん変わってきてしまっている。今までの経験から収穫するタイミングだと思って行ったら、もう葉が落ちちゃっていたということもあります。50年のなかで大変なこともまあありましたけど、まさかこんな人生の後半でコロナウィルスや気候変動に悩まされるとは、という思いです。

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——絶え間ない努力の積み重ねや、飽くなきチャレンジ精神によって今日までお店が続いてきたのだと感じました。世代から世代へ、受け継がれてきた想いやこれからのことについてお聞かせください。
 

節子さん:私も外から嫁いできて、彼女(香保里さん)もそう。家族の中で私たちだけが血の繋がっていない他人ではあるけれど、ただの嫁姑や家族の関係だけではなくて、伝統を支える想い、ものづくりへの想いで深く繋がっています。また家族と同時に、ひとつのチームとしてお店がどう発展するかを話し合えるのは嬉しいことでもあります。

私は実家が呉の鉄工所でした。腕のいい工場で、父の技術をたくさんの人が見学に来ていた様子も見ていて、より良いものをつくれば人に喜んでもらえるということを肌で感じてきました。ですから、商売人である前にものを作ることに対するこだわりは私の根底にあったのかもしれません。

今は彼女が中心になって、お店のため、箕面のために色々ことを考えてくれるので、次はどんな新しいことを思いつくのかと日々楽しみです。私はとにかくもみじの天ぷらを綺麗に美味しく作り続けることが仕事ですけれど、失敗を恐れずにみんなで挑戦し続けたいですね。

 

——最後に、もみじ天ぷらセットに興味を持って頂いた方々へメッセージをお願いします。
 

香保里さん:秋の香りを纏って、もみじの天ぷらをつまみながら深まる秋を楽しんでいただけたらと思います。一人の時間や、誰かと過ごすゆったりとした時間のお供にして頂けたら嬉しいです。

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聞き手・文:ベセベジェ

撮影協力:久國紅仙堂 

〒562-0001 大阪府箕面市箕面1丁目1−40

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