リベルタパフュームがお届けする「実りの秋」にインスピレーションを受けたFRUCTUS。その香りをさまざまな観点で楽しんでいただきたいと思い、今回はムエットの体験キット(1,000個限定)をご用意しました。
ムエットキットを先行してお手に取っていただいた方はお気づきになったかもしれませんが、実はコース料理を楽しむかのような体験がデザインされています。このジャーナルでは、なぜFRUCTUSは味覚のレンズを通した表現がされているかについて「味覚と嗅覚」というテーマでご案内させていただきます。
◎お店を持たないゆえの取り組み
リベルタパフュームはお店を持たない稀有なパフューマリーです。一人ひとりと直接繋がり、お客さまのことをきちんと知った上で、香りの魅力をお届けしたい。流通にお金を使うのではなく、上質な香料にお金を使った香りを楽しんでいただきたい。
さまざまな想いを胸にWEBを主体として発信をしておりますが、いつも悩むことは「どうしたら私たちの香りを知っていただけるのだろうか」ということ。肝心な香りそのものは、どうしてもオンラインで体験いただくことができないのです。
パーソナライズの香りはお気に召さない場合は交換無料とさせていただいたり、プレタポルテの香りはムエットの配布を無料でさせていただいたり、ポップアップを開催して直接香りを嗅いでいただく機会を増やしたり...手探りですが多くのことにチャレンジしてきました。
そんなモヤモヤを抱えながら、実りの秋からインスピレーションを受けたFRUCTUSについて考えを巡らせていたある日のことです。
実りの秋といえば味覚...もし嗅覚が味覚のように表現できるならばどうだろう...?と突拍子もないアイデアが、ふと私の中に降りてきました。
実は嗅覚と味覚は非常に近しい感覚としてリンクをしています。そして私たちは、嗅覚の表現よりも、味覚の表現の方が慣れています。香水のレビューをするよりも、食レポをする方が身近な存在であるはずです。
そんな慣れ親しんだ味覚のレンズを通すことで、ちょっぴり複雑でわかりづらい嗅覚の世界がもう少し身近になるのではないか。私たちの香りも、実際に嗅いでいただくのと同じように、もっと解像度高くお伝えできるのではないか。
そこに思い立った時、私の頭の中にはいろいろなアイデアが浮かんできました。
<豆知識:味覚の70%は嗅覚だと知っていますか?>
少し専門的な話をさせてください。味覚と嗅覚が密接に関係していることがわかる代表的な例として「鼻が詰まっている時には味がわからない」というものがあります。
嗅覚には「オルソネーザル」と「レトロネーザル」の2種類があります。
オルソネーザルとは、鼻から香りを吸い込み、その香気成分を香りとして認知することをいいます。香水を楽しんだり、料理に鼻を近づけて香りを楽しむ場合が該当します。
一方でレトロネーザルは、喉の奥にある鼻腔から、鼻に戻ってくる際に、香りを認知することをいいます。そしてこのレトロネーザルが、私たちが味として認知している部分の多くを司っているのです。鼻が詰まってしまうと味がわからなくなるのは、このレトロネーザルがうまく機能しないことに起因しています。
◎味覚のレンズを通した取り組み
さて、味覚と嗅覚のリンクを考えてどんなアイデアがあるかと考えた時に、まず真っ先に思い浮かぶことは「FRUCTUSを料理にしてみよう」というアイデアでした。
ただこのアイデアは早々に頓挫しました。私たちには香りをクリエーションできても、料理のレシピを考案することはできませんでした。そしてシェフにお願いしてレシピを考案いただくだけの予算は、まだこの小さいパフューマリーにはありませんでした...。
しかしFRUCTUSに使用している素材を、食事のように表現して体験していただくだけでも身近になるのではないか?と思い、コース料理のような体験ムエットキットをご用意し、また各セットと香料を料理のように表現するということに挑戦しました。
◎体験ムエットキット
FRUCTUS(フラクタス)の特徴となる5つのキーノートを染み込ませたムエット(試⾹紙)を、まるでコース料理のようにひとつずつ嗅いでいくことで、移ろいゆく⾹りの素晴らしさを体験できることができます。
香水にはトップノート、ミドルノート、ラストノートと呼ばれる、時間によって香りたちが異なる性質があります。ほとんど全てのブランドがディスクリプションと呼ばれる、その香りを説明する「文章」という手段で、香りの移り変わりを表現します。
しかし言葉だけではわかりづらいのが現状です。また香水のトップ・ミドル・ラストは決まったタイミングで切り替わるのではなく流動的に変化していくことから、本当の意味でその変化を正しくお伝えできるのは、創り手であるパフューマーだけでしょう。
創り手であるリベルタパフュームだからこそ知っている、この香りの移り変わりをもっと身近に感じていただくため、料理のレンズを通した体験セットをご提供することに意味があると考えています。
◎料理のような表現
FRUCTUSのビジュアルは、料理表現を参考にしたものとなっていますが、ここまで読んでくださった、リベルタパフュームのコアなファン、もしくは偶然迷い込んでしまったあなたにちょっぴり秘密をお教えします。
公式サイトの中に、お皿に乗ったFRUCTUSのフルボトルの画像があります。タップする使用している香料が表示されるようになっているのですが、レストランのメニューのような表現になっているのをお気づきになりましたか?
黒胡椒(ブラックペッパー)、杜松実(ジュニパーベリー)、ダークメープルは食材として手に入りますので、ぜひこの説明を読みながら、フラクタスを嗅ぎながら、一緒に素材を食べてみてください。味の保証はできませんが、この香りがグッと身近になることでしょう...!
そしてほとんど市販では手に入らないのですが、なんとこのお皿には「サンダルウッドナッツ」というサンダルウッドから取れた実を使っています。その食感はマカダミアナッツのように柔らかく、味は比較的に淡白ですが、噛むほどにサンダルウッド調のミルキーな味わいが広がります。
オーストラリアの国内で一部流通している程度ですが、魚料理と合わせて食べると美味しいそうです。私は北海道に住むオーストラリア人の方から購入させていただきました。もし私に合う機会があれば、サンダルウッドナッツを食べてみたいとお声がけください。少しお裾分けさせていただきますね。
さて長くなりましたが、「香りの民主化」を目指すリベルタパフュームは、今回は味覚のレンズを通して、香りの世界を身近に感じるという新しい挑戦をはじめました。喋りたがりな性格ゆえ、色々と書いてしまう癖があるのですが、そんなことは一切忘れていただいて(笑)楽しんでこの香りを体験していただけたら嬉しく思います。
あ、そうそう!多くの皆さんが疑問に思うであろう「もみじの天ぷら」とのコラボレーション。これは、また別のジャーナルでじっくりお届けさせていただきますのでお楽しみに!
◆LIBERATIONコレクション
「解放」という名のプレタポルテ(=完成品)コレクション。最初のシリーズは「香りのないものに、香りを与える」シリーズ。誰もが記憶の中で共通したイメージを持っているのに、実際には香りを持たないものたち。それらの香りを、自由に想像し、創造していく。誕生したのは、初めてなのにどこかで出会ったことがあるような、不思議な香りたち。固定概念から解き放たれ、正解のない香りを生み出す行為は、 香りのあり方そのものを再定義するような、私たちらしい挑戦でもあります。
プロフィール:
山根大輝@NY406
Founder&CEO。大学卒業後、コンサルティングファームで働きながらパルファンサトリで調香を学ぶ。好きな香料はプチグレン、ネロリ、ガルバナム。LIBERTAはグリーンタイプを愛用