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2021.06.09

ひまわり調香日記(前編)

こんにちは、LIBERTA perfumeの山根です。続々とSOLTERRAのムエット注文をいただいております。チーム一同、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。店舗を持たないパフューマリー(香水屋さん)として、なかなか嗅げる機会をご提供できずにご不便をおかけしてしまうこともあるかと思いますが、ムエットを嗅いでみていいなと思っていただけたら、ぜひお求めいただければ幸いです。


さて、今回はひまわり調香日記と題しまして、前編・後編でお届けしたいと思います。前編では主にこの香りの詳しい説明、後編ではクリエーションに至るまでの経緯を書いておりますが、どれも取り止めのない内容になっております。ぜひお時間ある際に(本当にひまな時間に)ゆったりとお読みいただければ幸いです。


◎私たちのこだわりとは

いきなりややこしい話ですみませんが、私たちは「いい香り」に対して、明確な方程式を持っています。

 

それは「素材のよさ x テクニック x センス」です。

 

あまり香りではピンとこないと思うので、和食に置き換えて考えると、

 

・上質な食材を使用して = 素材の良さ

・卓越した調理技術のもと = テクニック

・考案された独自のメニュー = センス

 

ということになります。

 

そしてこの方程式をもう少し具体的に紐解いていくと、

 

香り本来の良さを引き立てながら、鼻あたりが良くていつまでも嗅いでいたくなる香り。 どこか心の琴線に触れるけれども、新しさを感じるような香り。

 

と言語化ができます。LIBERTA perfumeは、全ての香りにおいてこの方程式を基準として、香りをクリエーションしています。

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◎SOLTERRAの素材の良さとは?

私たちが掲げる「素材の良さ」は、天然香料が中心となります。自然物の香料素材から、まるっと抽出された状態の香料を指しますが、その香りは「生っぽさ」があります。まるで、そこにお花が咲いているような、草木が生い茂っているような、そんな気持ちにさせてくれます。そして天然香料は、検知できないほどの数百から数千の香気成分で構成されていることから、一種類を採用するだけでも、複雑な香りをクリエーションすることができます。

 

しかし誤解がないようにお伝えすると、必ずしも天然香料がいいものではありません。天然香料は、その複雑な構成から人体に有害な成分が含まれていたり、産地や品種、また季節によって香りが異なるので、安定的に同じ香りを供給することができません。IFRAという基準を守ることで、人体への安全性を考慮していますが、完全に安全性が検証された合成香料の方が安全なことも多いのです。

 

では、一体なぜLIBERTA perfumeは、天然香料の素材の良さを大切にしているのか。それは言葉にすることがとても難しいのですが、やはりその「生っぽさ」に理由があります。心地よさだけでなく、えぐみ・苦味・渋みなどネガティブな側面を持つ香りですが、どこか自然の情景が思い浮かび、心が安らぐような印象を受けます。

 

私たち人間が生きている空間には、何万もの香気成分が飛び交っています。その中にあって、たまたま数百〜数千の香気成分のカタマリに出会い、認識することでいい香りと出会うのです。私たちが日々くらし、自然を愛で、食事を楽しみ、時に旅をする...その中で自然といい香りの記憶が蓄積されていきます。私はその蓄積された記憶を、自然物から抽出する天然香料が引き出してくれるのではないかと考えているのです。

 

SOLTERRAは、驚くことに80%以上が天然香料で構成されています。世の中に流通している香水のほとんどが天然香料の含有量は10%以下ですので、どれだけ掟破りな香水であるかをお分かりいただけるかと思います。

 

まずSOLTERRAのトップノートにある、オレンジビガラード。ビターオレンジの果実を絞ることで抽出される香料ですが、特徴的な甘さの中にある大人っぽいビターな要素。このビターな要素が、ひまわりの弾けるようなフレッシュさの中に、ちょっぴりアーシーな(大地の)要素を加えてくれます。

 

そしてミドルノートのネロリとオスマンサス。ネロリはビターオレンジの花を水蒸気蒸留で抽出しますが、とても貴重な香料で、フローラルの甘さを持ちながら、柑橘のフレッシュな要素もある爽やかで心地よい香りです。オスマンサスは、日本語で金木犀。秋になるとみんな話題にするオスマンサスですが、実はアブソリュート(特殊な溶剤でそのまま香りを抽出する)になると、じっとりと湿り気を帯びた香りになります。ふんわりと甘いオスマンサスの要素もありますが、力強さとえぐみを持ったフローラルの香りが特徴です。

 

ラストノートにあるベチバーとシダーウッド。ベチバーはイネ科の植物で根っこから香りを抽出しますが、土のような香りが特徴的です。シダーウッドは、鉛筆を削った時のようなシャープでドライな香りが特徴です。

 

それぞれがとても強い個性をもっている香料たちですが、それをどのように調理しているのかを「テクニック編」でご紹介します。

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◎SOLTERRAのテクニックとは?

私たちLIBERTA perfumeのパフューマーチームは、20代・30代の若いメンバーで構成されており、まだ調香技術を語るほどのキャリアを積んでいません。しかし、誰よりも香りと向き合い、実験を積み重ね、そして経験豊富なシニアの方々から学ぶことで香りをクリエーションしております。そんな私たちが考えるこだわりポイントをお伝えします。

 

今回クリエーションしたSOLTERRAのポイントは、素材の良さを引き立てながら調和を取るということです。「素材編」でご紹介したような香料たちは、それだけで一つずつが主役となるような個性を持っています。特にオスマンサスに至っては、素材そのままでは香り全体が沈んでしまいます。

 

私たちは(他のパフューマーも同じかと思いますが)少ない香料の組み合わせで実験を繰り返し、アコードを取っていくアプローチでクリエーションをします。

 

今回のSOLTERRAを例にすると、まず①〜③のベースとなるアコードを取り、それぞれ別に香りを評価します。

 

①ひまわりのみずみずしい印象:

オレンジビガラード、グレープフルーツ、ガルバナム など

 

②伸びやかな花弁:

ネロリ、オスマンサス、オレンジフラワー、チュベローズ など

 

③どっしりと大地に生える根:

ベチバー、シダーウッド など

 

そして各ベースが納得いくものになれば、はじめて①〜③を混ぜて全体のバランスを確認します。実は当初はもっとグリーンの比率が高く、もう少しTERRA感が強かったのですが、香り立ちが鈍くなってしまっていたので、その割合をを減らすなど、細かい部分のバランスを調整していきました。

 

また天然香料80%と書きましたが、20%の合成香料たちがあってこそ、SOLTERRAは香水として成立しています。全体のバランスを保つための「つなぎ役」となる香料、香りたちをより鮮やかにするための香料、柑橘の持続力を伸ばしてくれる香料など、役割はさまざまです。アロマセラピーのように天然香料だけで作られる香りのシンプルさも好きなのですが、きちんと持続して香ってくれるためには合成香料との組み合わせが不可欠です。

 

少しぼかして記載をしてしまったので伝わりづらい部分もあるかと思いますが、素材の良さを引き立てながら調和を取ることを目指した、実験の積み重ねがその背景がテクニックに通じています。

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◎SOLTERRAのセンスとは?

前回のジャーナルでは「説明がなくとも、元気なエネルギーを感じ取れる香り」であると書いたのですが、イベントやムエットを嗅いでいただいた方の反応をみると、共感いただけた方も多いなと感じています。

 

私自身、詳しい説明やビジュアルがないと心が動かされない香りは、あまり評価できる香水ではないと考えています。しかし、コンセプトと香りが一致している香水こそ、より魅力的に感じるのも事実です。

 

SOLTERRAのユニークさは、そのコンセプトにもありますが、少しテクニカルな話をさせていただくとオスマンサスアブソリュートの使い方にあると思います。オスマンサスはほとんどの香水でピーチ調のフルーティな香料と一緒に用いられています。SOLTERRAでは、柑橘とオスマンサスをメインとしていることから、既存のブランドが取り扱うことの少ない組み合わせになっています。そしてこの組み合わせは、他ブランドとの比較によって検討されたものではなく、純粋にひまわりのイメージを追った結果として誕生したことも、そのユニークさの一つです。

 

香水におけるセンスの解釈は、人によって様々なものがあると思うのうですが、私たちが考えるセンスとは、コンセプトの新しさだけでなく、アコードとしての新しさをもち、それでいてきちんと心地よい香りとして成立しているものが該当するのではないかと考えています。

 

◎まとめ

今回のジャーナルでは、あえて私たちが大切にしていることを言語化してお伝えしました。もしかすると、お客さまの中にはこのような話を知る必要はない!と思う方もいらっしゃるかもしれません。ただ私は、LIBERTA perfumeのことを全部知っていただいて、それでも香りが好きだ、応援したい、と思っていただけるブランドでありたいのです。なぜならば、いつか感動してくださったお客さまが、香りを仕事にする道に踏み出すかもしれないですし、私たちと一緒にブランドを創る側になる未来もあるかもしれないからです。

 

6/7(月)〜13(日)にて、Life Scent Weekという表参道で開催するイベントでは、SOLTERRAを先行販売いたします。ぜひお近くの方はイベントに足を運んでいただければ嬉しいです。


 

プロフィール:
山根大輝@NY406
Founder&CEO。大学卒業後、コンサルティングファームで働きながらパルファンサトリで調香を学ぶ。好きな香料はプチグレン、ネロリ、ガルバナム。LIBERTAはグリーンタイプを愛用。

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