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2021.02.03

【桜の香水ができるまで】#02「なぜ”桜”を創るのか」

さて、前置きが長くなってしまいましたが、まずは私たちがさくらの香りをクリエーションすることへの想いをお伝えしたいと思います。「香りがないものを、あえて香りで表現したい」というテーマにも関わらず、なぜさくらなのか。世の中にサクラの香りや香水はすであるじゃないか、と思う方もいらっしゃるかもしれません。ところが実は、さくらは特定の品種をのぞいて、ほとんど香りのない花なんです。ほとんど香りがない(*)にも関わらず、世の中にはサクラという名前のついた香りがたくさん存在している...…そしてなぜか、それらサクラの香りはほとんど2つのタイプに分類されてしまっているのです。

分類①:”チェリー”ブロッサム
これは特にヨーロッパ圏、北米圏のブランドが出す香りに多いのですが、甘酸っぱさのある”サクランボ”の香りです。フルーティな要素を持った香料に、シャンプーにもよく使われるフローラル調の香りをブレンドした香りに、サクラという名前をつけた作品がたくさんあります。でも、満開のさくらを見て、果たしてサクランボを感じるでしょうか。私たち日本人の感覚では、サクラとサクランボは別のものですよね。実はここには、自然からくる文化的背景の違いがあります。ヨーロッパに自生するサクラは、セイヨウミザクラという品種が多く、主にサクランボの実はこの種に由来するといわれています。そのため、ヨーロッパ圏のパフューマーにとって”チェリーブロッサム”とは、身近にあるサクランボの実る品種が想起されるのです。

分類②:桜餅の香り
桜餅の香気成分である”クマリン”を使用した軽やかなフローラル調の香りを”サクラ”と表現するブランドがあります。クマリンはさくらの葉に含まれる香気成分で、バニラのようなふくよかな甘みを特徴としています。そんなクマリンですが、これはさくらの花や葉が枯れた後、塩漬けにしたりして細胞が壊れることで出る香気成分なのです。つまり、確かにさくらを表現する要素なのですが、満開に咲くさくらのイメージで販売されていながら、実際は葉桜になったあとの加工された桜のの香りということになるのです。

(*)厳密にはごく微弱な香料が検出されており、桜餅のような香気成分のクマリン、杏仁豆腐のようなベンズアルデヒド、少しスパイシーなアニスアルデヒド等が含まれているといわれています

私はいま存在している多くの”サクラ”の香りを否定しようとは思っていません。しかし、自分の心にも深く根ざしている、あの「堂々と満開に咲くさくらを表現した香り」はこの世にまだ存在していない、と感じています。プレタポルテとなるLIBERTATION(リバレイション)コレクションの一本目として発表するにあたり、私の自由な発想で自由に桜の香りを再定義したい。けれどその新しい香りは、私たち日本人が思い浮かべる”桜”を表現するものでありたい、そのように考えています。

次回、サクラジャーナル #03「香りのきっかけ」は、2021年2月5日公開です。

プロフィール:
山根大輝@NY406
Founder&CEO。大学卒業後、コンサルティングファームで働きながらパルファンサトリで調香を学ぶ。好きな香料はプチグレン、ネロリ、ガルバナム。LIBERTAはグリーンタイプを愛用。

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