こんにちは、LIBERTA perfumeの山根です。LIBERATIONコレクションの第三弾となるFRUCTUS(フラクタス)を無事に発表することができました。
「香りのないものに香りを与える」をテーマにした、春のサクラマグナ、夏のソルテッラに続く、秋のもみじをインスピレーションにクリエーションされた香りです。
前作でもクリエーションの裏側をジャーナルにてお届けしましたが、予想以上に多くの方に読んでいただくことができ、続編を心待ちにする方の声を多くいただきました。今回も「私たちのための香り」を目指すリベルタパフュームの等身大の裏側を知っていただけたら何よりです。
◎秋といえば、何を思い浮かべますか?
食の秋、読書の秋、スポーツの秋。私たちにとって秋は、たくさんのイベントがあります。香りのないものに香りを与えるテーマとして、非常に多くの誘惑がありました。しかし秋を象徴するものとして外せないのは、やはりもみじではないかと思うのです。
ここ数年は、夏と秋の境界は曖昧で、急に暑さを取り戻したり、かと思えば次の日には厚手のニットが必要になったりと、夏と秋を行ったり来たりすることが増えてきたのではないかと思います。夏への諦めきれない気持ちを携えたまま、やっともみじが赤づいた頃に「ああ、もう夏は完全に終わってしまったのだな」と秋の訪れを受け入れている節があります。
そんな私にとっての秋の訪れを告げてくれる、もみじ。
この美しさをLIBERATIONコレクションで表現したいと考えました。
◎もみじの香りとは
偶然にも、LIBERATIONコレクションの三作は、植物をインスピレーションにクリエーションされましたが、私たちがやろうとしていることは、香りの再現ではありません。
それぞれの季節の象徴となる「何か」にインスピレーションを受けて、私たちなりにその「何か」を解釈し、香りに落とし込みます。ときにその「何か」を分解したり、違う視点で捉えてみたり、昔と今でどのように変わってきたのかを考えたり、じっくりと向き合うプロセスを大切にしています。
皆さんは「もみじ」からどのような印象を受けますか?
京都のお寺を思い浮かべる方もいれば、パリッとした葉が敷き詰められた赤い絨毯を思い浮かべる方もいるでしょう。またもみじ饅頭のように食を連想する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私にとってのもみじは、情景としての印象を超えた概念のようなものでした。
もみじを見たときには、真っ赤に燃え上がるような「静かな力強さ」を感じると同時に、その裏にひっそりと潜むかすかな寂しさを感じます。それは、もみじという象徴を通して、秋の季節がもたらしてくれる喜びと、冬の気配を感じる寂しさを感じているとも言えるかもしれません。そんな秋の持つ二面性の精神が、この香りには閉じ込められています。
そしてFRUCTUSは同時に、秋の実りからもインスピレーションを受けた香りです。植物たちが最後の輝きをみせ、子孫(果実)を残します。その最後の輝きを私たちは享受し、秋の味覚として堪能するのです。この秋の実り ≒ 味覚というインスピレーションは、香りの中にダークメープルアコードを用いたり、この香りを料理として捉えた表現の中に散りばめられたりしています。
どうしてFRUCTUSには、ダークメープルアコードが使われているの?と疑問に思った方もいるかもしれません。そのあたりは、メインクリエーションを担当したパフューマーの武宮のジャーナルでご紹介させていただきます。
◎すごく好みが分かれる香りです
FRUCTUSの香りを、香水の世界のカテゴリーに当てはめると「グルマンウッディタイプ」というタイプになります。グルマンとは、元々は食いしん坊という意味の言葉ですが、スイーツや食べ物など、甘いものを表現した香りのジャンルを表します。ウッディは、その名の通り木々の印象を感じる香りです。
そして、グルマンタイプは「人によって好みが分かれる香り」です。かくいう私は、実はグルマンタイプの香りが苦手でした。甘くて可愛らしいイメージは自分の香りではないとも思っていましたし、持続性だけはあるような、頭の痛くなる香りが多い印象でした。
しかしFRUCTUSは、グルマンが苦手な方にとっても、心地よくまとえるような香りにしたいと願いを込めてクリエーションされています。ほろ苦いダークメープルアコードは、上品に肌を柔らかく包み込んでくれるでしょう。そしてその甘さとスモーキーなウッディのマリアージュにきっと虜になるはずです。今までお手にとって来られなかった方にも、ぜひ挑戦してみていただけたら何よりです。
リベルタパフュームは、その名のとおり「自由な発想と自由なクリエーション」を大切にしています。万人にウケるような香りだけではなく、挑戦的な香りを生み出すことも、また自由なパフューマリーだからこそできることかもしれません。
リベルタパフュームは、このFRUCTUSが皆様にとってかけがえのない香りとなり、そして人生の彩りとなれるような香りとなることを願っております。
◆LIBERATIONコレクション
「LIBERATION(リバレイション)」=「解放」という名のプレタポルテ(=完成品)コレクション。最初のシリーズは、「香りのないものに、香りを与える」シリーズ。
誰もが記憶の中で共通したイメージを持っているのに、実際には香りを持たないものたち。
それらの香りを、自由に想像し、創造していく。
誕生したのは、初めてなのにどこかで出会ったことがあるような、不思議な香りたち。
固定概念から解き放たれ、正解のない香りを生み出す行為は、 香りのあり方そのものを再定義するような、私たちらしい挑戦でもあります。
プロフィール:
山根大輝@NY406
Founder&CEO。大学卒業後、コンサルティングファームで働きながらパルファンサトリで調香を学ぶ。好きな香料はプチグレン、ネロリ、ガルバナム。LIBERTAはグリーンタイプを愛用