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2022.02.02

チョコレートの香りの秘密

こんにちは、リベルタパフュームです。今日はバレンタイン間近ということで、チョコレートの香りについてお届けしたいと思います。専門的な話になりますが、身近なチョコレートを食べる時に、ちょっぴり意識してみると世界が違って見えるかもしれません!

 

◎チョコレートの香りとは?

 

私たちを虜にしてやまない、あの魅力的なチョコレートの香りはどこから来るのでしょうか。生活に馴染んでいる香りなので、チョコレートの香りは「チョコレートの香り」と表現をしてしまうほど一般的ですが、より具体的に香りを言葉にしようとすると中々難しいところがあるかもしれません。

 

実は、チョコレートをガスクロマトグラフィという成分分析器で分析すると、Acetic Acid(酢酸)やTetramethylpyrazine(ローストナッツの香り)、Limonen(シトラスの香り)、Vanillin(バニラアイスの香り)などが主成分として検出されます。また微量ですが、Phenylethyl Alcohol(ローズの香り)、Isoamyl Acetate(バナナの香り)など、フルーティやフローラルの要素も検出されています。

 

このように非常に複雑な香気成分が含まれることで、チョコレートが構成されていることがわかります。実は先ほどの成分は身近な香りとしても親しみ深い香りだったりします。

 

◎各香料の特徴を解説!

 

Acetic Acidは、食酢に含まれている弱酸で、非常に強い芳香です。

酢酸と聞けば小学校の理科を思い出す方も多いのではないでしょうか。チョコレートの他に、チーズや牛乳などにも含まれている事が分かっています。

 

Tetramethylpyrazineなどのpyrazine類はローストしたナッツの様な香調が特徴です。このような香りを、私たち調香師は「Nutty(ナッティ)」という言葉で表現します。そしてチョコレートの香りにはTetramethylpyrazineの他にも、たくさんのpyrazine類が含まれている事が分かっていますが、中には胡麻っぽい香りのする成分もあります。

 

Limonenは、レモンやオレンジなどの柑橘類に多く含まれる成分です。さわやかなレモンを思わせる香調ですが、少しオイリーなイメージもあります。揮発が早く香水のトップノートに使われる事が多く、非常に多くの香水にも使われている香りです

 

Vanilinは、天然のバニラに含まれる香気成分です。滑らかでミルキーな好調でバニラアイスの香りをイメージしていただければ分かりやすいと思います。リベルタパフュームでは、サクラマグナやニヴァリスのラストノートのバニラアブソリュートにも、このVanilinが含まれています。

 

Phenylethyl Alcoholは、天然のローズに含まれる香気成分です。Rose Pとも呼ばれさまざまなローズの香水に使用されています。強い香りではありませんが、バラの花びらのしっとりとした上品なイメージの香りがあります。調香を学ぶ際には、まず先に覚えることになる香りのひとつでもあります。

 

Isoamyl Acetateは、バナナの様な強い香りが特徴です。香りたちの印象は力強さがありますが、同時に揮発がとても早い香りです。エタノールで希釈した状態だと、5分〜10分程度で揮発してしまう事から、主にトップノートの香りとして使用されます。

 

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◎チョコレートと香りの相性

 

専門的な内容が続きましたが、このようにチョコレートにはとにかくさまざまな種類の香りが複雑に混ざり合って出来ている事が分かります。

 

また、これはあくまで個人的な考えですが、チョコレートがさまざまな食べ物と組み合わされているのは、このように多面的な香りの特徴があることによって、組み合わせにも深みが出るためではないとも思います。

 

例えば、アーモンドやマカデミアなどのナッツととても相性が良いのは、pyrazineからなるナッティな香りが影響しているのではないか。お祭りの出店でよく見かけるチョコバナナも、Isoamyl Acetateのバナナの特徴により、香りがマッチしていて相性が良いからこそ生まれたのではないかなと考えています。

 

余談ですが、皆さんはカカオの香料がどのようなものかご存知ですか?

 

チョコレートの原材料のカカオ豆から抽出される「Cacao Abs(カカオアブソリュート)という香料が存在します。しかしその香りは、お菓子のチョコレートの甘さやマイルドさではなく、スパイシーで重たく苦みのある香りが特徴です。無糖のココアのようなちょっぴり大人な印象を受けます。

 

◎もしリベルタパフュームでチョコレートの香りを作るなら?

 

最後に、もしリベルタパフュームのフルオーダーでチョコレートの香りを作るならどのような処方になるかを考えてみました。お客様からチョコレートの香りを依頼される事が増えてきましたので、これから日本でも人気の香りになっていくのかもしれません!

 

ということで、リードパフューマーの山根と一緒に処方を考えてみました。(フルオーダーは受けたことのある人にしかわからない内容になってしまいました!ごめんなさい!)

 

【山根案】

 

どんぴしゃにチョコレートを表現する香りがないのですが、プレミアム香料のバニラアブソリュートは必須の処方になってくると思います。そしてチョコレート単体ではなく、バーのような空間で洋酒を傾けるような情景を思い浮かべる・・・そんな香りにするために、ベースはWoody Orientalを選択します。更にトッピングでは「09_Sweet Woody」で粘り気のある甘さを足してみたり、ほんの少し「13_Flora Bouquet」のようなお花の要素をアクセントに追加したりするかもしれません。

 

フラクタスのジャーナルでも書いたのですが、あんまりグルマンの香りが得意ではないので、ストレートに表現するのではなく、ちょっぴりビターで大人っぽい雰囲気の香りの中にうまくチョコレートをアクセントにしていきたいなと思います。
 

【武宮案】

 

私がフルオーダーでチョコレートを表現する場合は、まずFruityベースを選びます。Fruityのピーチやカシスの甘さを軸にしつつ、トッピングとして「18_Sweet Balsam」と「09_Sweet Woody」を使い、重厚感のある樹脂感や温かみのあるウッディの要素を足すことで香りに奥行きを出します。

 

最後にプレミアム香料のバニラアブソリュートをほんの少し追加する事で、ふくよかで滑らかなラストノートに仕上げます。完全なチョコレートの香りを再現する事は難しいですが、イメージに近づく香りになると思います。

 

何度かトライアルを重ねている、オンラインフルオーダーではチョコレートのような香りがほしい!といったご要望にもお答えをしています。もし注文してみたいという方は、以下のURLからご注文いただけましたら、担当パフューマーがカウンセリングをして、あなたのイメージする香りをクリエーションさせていただきます!
 

https://liberta-perfume.com/shop/products/90OG_50ml 


今回はチョコレートと香りにまつわるジャーナルでした。また次回もお楽しみに!

 

 

プロフィール:

武宮 志昌

Perfumer。化学、生物系の専門学校を卒業後、PARFUM SATORIに入社。コンパウンダーとして4年間勤務しながら調香技術を学ぶ。その後、LIBERTA perfumeにパフューマ―として参加。好きな香料はバニラ、オポポナックス、ラブダナム。また、雨の香りがとても好き。

 

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