それから、財布の中身にいつもより余裕がある時もそうだ。ボーナスが入った日なんかには、それまで保留にしていた香水を迎えようなどと気持ちが大きくなる。服や時計と比べてしまえば高額すぎるということもないから、ちょっとした臨時収入があっても香水に回そうかしらと思いがちだ。僕が勤めている会社は夏と冬にボーナスを頂戴できるので、やはり年に2本は香水が増えていることになる。いや、こういった不毛な計算はやめておこう。
あるいはイベントがある時。先日の伊勢丹サロンドパルファンやGINZA SIXでのLTFPなど香水関連のイベントがあると、何かしらは買うんだろうなという心算で行くことになる。たしかに、イベントだと限定品や新作が発売されるというのも大きな理由だが、やはりお祭り気分というか、この出費は不可抗力とさえ思ってしまう。こうしたイベントは最低でも1年ごとに開かれているわけだから、つまるところ年に1本は香水が増えていることになる。いや、こういった不毛な計算はやめておこう……。
香水という、値札のついた実体を購入する以上、それぞれの懐事情や居住スペースと相談するしかないわけだが、それでもやはり香水は最低3本持っておいた方がいいように思う。詳しいことはぜひこちらの記事(香水専門ブランドが実践する、毎日の香水の選び方とは!?)を読んで頂きたいのだが、いずれにせよ、服に置き換えてもらえれば使い分ける楽しさ(あるいは必要性)をイメージしやすいと思う。それに、3シーズン対応とか2WAYといった製品は確かに便利なのだが、どうも大切な何かを犠牲にしているように思うのだ。
今、外に出かける機会は大きく減った。日ごとテレワークが推奨され、仕事とプライベートの境界も曖昧になりつつある。だからこそ、シーンごとの香りでメリハリをつけるという香水の使い方も、新たな生活様式のひとつと言っていいのではないだろうか。香水を使い分ける楽しみというのは少し贅沢に、また面倒なことに聞こえるかもしれない。しかし、利便性の追求を燃料にして今日まで滑走してきた人類史の中で、香水という、とても合理的とは呼べない瓶詰めの水溶液が古代から失われずにいることを思うと、その贅沢と手間にこそ文化の香りが濃厚に立ち込めているような気がしてくる。